須走口登山道 開山式

毎年七月十日に執り行われる、富士山須走口登山道の開山式。

夏の登山シーズンの始まりにあたり、東口本宮冨士浅間神社(須走浅間神社)の斎主による神事のもと、登山道の入口で山頂までの安全を祈る。

朝、五合目の売店街と「富士山須走口五合目」の標柱が立つ広場には、祭礼を見に来た人や関係者が集まっている。やがて神職と巫女に導かれ、道案内の神とされる猿田彦の面装束をまとった天狗、白装束に菅笠と金剛杖の行者たち、「氏子青年会」「神桜会」などの幟を掲げた地域の人々、来賓や報道陣が長い列をなして登山道の入口へ進む。

登山道の入口に設えられた斎場には、神饌を供えた台と幣帛が整えられ、神職が祝詞を奏上し、参列者一同が頭を垂れて拝礼する。須走は宝永四年(一七〇七年)の噴火で村が焼け、五日間で一丈三尺(約四メートル)余りの砂が降り積もった土地でもある。

続いて、登山道の入口に立つ木造の鳥居に新しい注連縄が張られる。天狗と神職、氏子の若者が縄を鳥居の柱に結びつけ、山頂への道が開かれる。

行列はさらに奥の小さな祠に向かい、参列者一同が拝礼して祭礼は終わる。白装束の行者たちは、ここから実際に山頂を目指して登り始める。須走口には、下山の際に砂礫の斜面を一気に駆け下りる「砂走り」があり、江戸時代から知られていた。

二〇一三年、富士山が「信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録された際、須走口登山道もその構成資産の一部となった。